アミノ酸系界面活性剤のクラフト点に及ぼすアミノ酸の光学活性と側鎖の影響

主にイオン性界面活性剤の水に対する溶解度は、ある温度以上で急増する。この温度はクラフト点と呼ばれ、この温度以上では界面活性剤がミセルを形成して溶解する。種々のアシルアミノ酸のラセミ混合物(DL体)および光学活性体(D or L体)のクラフト点を測定し(Fig.1),対イオンとアミノ酸側鎖のサイズの観点から検討した。

Fig.1 各種アシルアミノ酸塩のクラフト現象に伴うDSCサーモグラム

Fig.2 優先クラフト温度に及ぼす対イオンとアミノ酸側鎖の相関
Fig.3 水和固体中での相互作用に及ぼす対イオンおよび側鎖サイズの影響

実験結果からフェニルアラニンを除いてアミノ酸の側鎖がかさ高くなるほど,また対イオンのサイズが大きくなるほど光学活性体のクラフト温度がラセミ体に比べ高くなり,ラセミ混合体を形成しやすくなることが分かった(Fig.2)。IR測定と分子軌道計算の結果より同一シート状でのアミド基と金属イオンとの相互作用はヘテロキラル系で有効に働くが,シートがスタックする際には,ホモキラル系においてその立体反発を緩和できるのではないかと考えられる(Fig.3)。またフェニルアラニンの場合はベンゼン環同士のスタッキング相互作用がラセミ化合物形成に有利に働いているものと考えられる。

Colloid Polym. Sci., 2003, 282, 162-169

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