研究概要・目的
有機太陽電池
有機太陽電池は、有機半導体を用いた薄い膜で光を電気に変える太陽電池です。軽量で柔軟、低照度でも発電しやすいといった特長を持ち、従来の硬く重いパネルでは設置が難しかった場所にも適用できる可能性があります。近年は材料・界面設計や薄膜プロセスの進展により変換性能が大きく向上し、実装を意識した開発段階に入りつつあります。一方で、実用化を見据えると「どれだけ発電できるか(性能)」に加えて、「どれだけ長く安定に使えるか(耐久性)」が同等に重要になります。有機材料は設計自由度が高い反面、光・熱・酸素・水分、さらには電極界面での反応などにより劣化が生じやすく、発電層や界面、封止を含めた総合的な耐久性設計が欠かせません。
私たちは、材料設計・薄膜構造制御・界面設計・封止技術・劣化解析を一体として進め、性能向上と耐久性向上を両輪として研究を展開しています。とくに、実際の使用環境に近い条件での評価を通じて劣化要因を切り分け、どの要素が寿命を律速しているのかを明確化したうえで、材料・構造・プロセスへフィードバックする設計指針の構築を重視しています。また、有機太陽電池の社会実装には大面積化や量産プロセス適合、封止・耐環境性、コストや安全性など、研究室スケールでは見えにくい条件が数多く存在します。私たちは企業との協力を通じて、研究成果を「使える形」に落とし込み、実装課題を踏まえた開発を進めています。
さらに、有機太陽電池の価値は単に発電効率を追うだけでなく、薄膜デバイスならではの特長を活かして“特定用途”を切り拓ける点にあります。例えば、光を適度に透過しながら発電できる半透明太陽電池は、窓・温室・外装材などへの展開が期待され、発電と採光・意匠性の両立が可能になります。寒冷地や低照度環境に向けた設計では、温度・照度条件の違いが材料物性や界面挙動に与える影響を踏まえ、安定動作のための材料・デバイス設計を行います。加えて、電極を含めて有機材料で構成する全有機太陽電池にも取り組み、軽量性・柔軟性・加工性といった利点を最大化しつつ、耐久性や実装性の観点から最適化を図ります。こうした研究を通じて、有機太陽電池を「設置が難しい環境でも使える発電デバイス」へと発展させ、現実の用途に結びつく薄膜エネルギーデバイスの基盤技術を確立することを目指しています。
Unlocking High-Performance in All-Organic Solar Cells by the Development of Organic Electrodes with No Acid and High-Temperature Treatment and the Effective Preparation Thereof on Organic Multilayer Films, Advanced Functional Materials, 2025, 35, 2419813.
Suppression of the photocatalytic activity of ZnO fabricated by the sol–gel
method under gentle vacuum for highly durable organic solar cells, Sustainable
Energy & Fuels, 2023, 7, 431.
Electrode sticker for electrode lamination process enables highly durable
inverted organic solar cells, 2022, 285, 117024.
